日本酒に合う奈良の名産品とは

奈良歳時記

こんにちは!奈良の郷土料理「柿の葉寿司」のゐざさ-中谷本舗-です。

奈良の食を語るときに、よく引用される文豪・志賀直哉の一節があります。

(奈良は)食ひものはうまい物のない所だ

随筆「奈良」(志賀直哉、1938年)

1938年、奈良県が発行した冊子「観光の奈良」創刊号に寄せたのが随筆「奈良」。この中には実は、わらび粉、豆腐、がんもどきは美味しいと褒めている箇所もあるのですが、今では「奈良はうまいものなし」の一節が一人歩きしてしまっています。

これは、奈良の食に携わっている私たちは見過ごすことはできません!!

たくさんの方に、奈良が誇る食をお伝えしたい。ということで、今回は「日本酒に合う奈良の名産品」をテーマに、いくつかご紹介します。

日本酒と奈良との関係

今回、「日本酒」に限定したのは日本酒と奈良には深い関わりがあるからです。

清酒発祥の地・奈良

実は清酒が作られ始めたのは、奈良であるというのはご存じでしょうか?

992年に創建された正暦寺(奈良市)。室町時代の文献には、同寺で作られていた清酒の製造方法が詳細に記述されています。ほかにも同寺で清酒が盛んにつくられていたことは文献として他にも残っています。

また、今の醸造法にもつながる「三段仕込み」や麹と蒸しただけの米「掛米」の両方に白米を使用する「諸白づくり」、酒母の原型である「菩提酛造り」、腐敗を防ぐ「火入れ」などの技法を使って作られていたそうです。こうして、それ以前まで作られていた「濁り酒」から「清酒」へと変貌したのです。

このような背景などから、奈良が清酒発祥の地と言われているのです。

酒造りの神様 大神神社

桜井市にある日本最古の神社「大神神社」。ご神体でもある三輪山は「三諸山」とも呼ばれてきました。「みむろ」は「酒のもと」という意味があり、お酒の神様として古くから信仰を集めてきました。

また、酒蔵や酒屋の軒先に掲げられている「杉玉」。これも大神神社が始まり、というのはご存じでしょうか?

杉玉は新酒が出来上がったしるしとして、酒蔵につるされますが、これらは大神神社から全国に届けられるのです。

日本酒に合う!奈良の名産品

奈良と日本酒との深い関わりを見ていただいたところで、ここからが本題。

日本酒に合う奈良の名産品をいくつかご紹介します。お取り寄せできるものもありますので、ぜひご家庭でも一度お召し上がりくださいね。

奈良漬

奈良漬はいわゆる「粕漬け」の一種。白瓜やキュウリ、ナスなどの野菜を塩漬けにした後、何度も何度も酒粕を変えながら、長いものでは5年も漬け込むのが特徴です。それにより、独特な「べっこう」のような色合いが出ます。

その歴史は古く、長屋王(684~729)の屋敷跡の発掘調査で出土した木簡に、「粕漬けの瓜」を意味する文字が書かれていました。平安中期の文献「延喜式」にも粕漬の瓜や冬瓜などの記述があり、当時は上流階級で食べられていたと考えられます。

「ナラヅケ」という呼び名は1492年の「山科家札記」に登場。江戸時代に、「奈良漬」という名で商品として初めて売り出されました。

奈良漬といえば、うなぎと一緒に食べることも多いですが、日本酒との相性も抜群。酒粕の効果で少し甘みと塩気があり、「アテ」に最適です。奈良漬を少しかじって日本酒を口に含むと、味わい深い風味を感じることができます。

奈良漬は専門店がたくさんあり、お取り寄せも可能。お店によってその味わいは様々ですので、ぜひ色々と食べてみてくださいね。

飛鳥鍋

飛鳥鍋という鍋料理をご存じでしょうか?鶏肉や野菜を牛乳と出汁で煮込んだ料理ですが、奈良の郷土料理として今に伝わっています。

実は奈良と牛乳との関係は深いのです。
現在の奈良・明日香村付近に都があった飛鳥時代に、百済から移住した人の子孫が伝えたとされています。そして牛乳を孝徳天皇に献上したところ、非常に喜ばれたそう。その後、都の近くに酪農家が集められたことで、宮中で牛乳が飲まれるようになったと言われています。

とても貴重で高貴な人たちしか飲むことができなかった牛乳ですが、次第にそれ以外の人たちも飲むように。すると、牛乳で鶏肉を煮込む料理が誕生。これこそが飛鳥鍋の原型と考えられています。近くで修業を積んでいた僧侶らが栄養を蓄えるため、その料理食べていたと言われています。

今でも飛鳥鍋を提供するお店は奈良にいくつもあります。鶏肉と野菜を入れた飛鳥鍋は、冬場にぴったり。熱燗などを一緒に飲むと、とても美味しいですよ。

柿の葉寿司

お寿司と日本酒は原料が同じ米ということもあり、とても相性が良いです。

奈良のお寿司といえば柿の葉寿司。奈良・吉野地方の人たちが、貴重なさばを美味しく食べるために、編み出した「保存食」でした。今では、奈良のお土産や贈り物として使っていただくことの多いお寿司です。

柿の葉寿司の歴史については、以下の記事で解説しています。

塩気のある「さば」や「さけ」に、甘めの味付けをしたシャリ。その風味と辛口の日本酒の組み合わせは抜群。

日本酒と柿の葉寿司については、以下の記事で奈良・橿原市の酒蔵「喜多酒造」の喜多社長にお話を伺っています。

最後に

今回は、日本酒に合う奈良の名産品をテーマに解説してきました。

「奈良にうまいものなし」と言われることが多いですが、奈良の食には歴史もあり、独特の食文化があることも知っていただけたのなら嬉しく思います。

地元・奈良に根差した企業として、今後も奈良の食に関わる情報をたくさんお届けしようと思います。今回ご紹介したもの以外にも、奈良には様々な料理、名産品があります。ぜひ、奈良にお越しください!

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