柿の葉寿司とは?奈良の郷土料理のその由来や日持ち、食べ方などを創業100年超の老舗が解説

柿の葉寿司_押し 柿の葉寿司のこと

こんにちは。奈良の郷土料理「柿の葉寿司」のゐざさ-中谷本舗-です。

当店は、奈良の名産品として全国的にも有名な柿の葉寿司を製造・販売しています。

駅弁や贈り物などで、全国の方々に広く知っていただけるようになった奈良発祥の柿の葉寿司ですが、なぜ、海のない奈良県でお寿司が名産品となったのか、などその由来を知らない方も多いのではないでしょうか。

この記事では、大正10年創業の柿の葉寿司の老舗メーカーである「ゐざさ‐中谷本舗‐」が、柿の葉寿司の由来やその日持ち、食べ方など、多くの方が疑問を持つ点について解説をします。

柿の葉寿司の由来・発祥

柿の葉寿司は、奈良県の紀伊半島南部の地域で食べられている郷土料理で、押し寿司の一つに数えられます。
今でこそ、様々な種類が食べられるようになっていますが、元々は鯖のお寿司を柿の葉で包んだのが始まりでした。

では、いつから食べられていたといえば、その発祥ははっきりとはわかっていません。

しかし、柿の葉寿司の誕生を紐解くの日深くかかわっていると考えられるのが、「もう一つの鯖街道」です。

柿の葉寿司発祥のカギを握る「もう一つの鯖街道」

「鯖街道」といえば、福井と京都とを結ぶそれが有名ですが、実は、紀伊半島にも「鯖街道」があったのです。

江戸時代中頃、紀州(現在の和歌山県)のお殿様が漁師たちに思い年貢を課したことから、漁師はそのお金を工面するために、さばを塩で締めて、吉野川沿いの村に売り歩き始めたーー

紀伊半島に存在していた鯖街道の由来として、よく唱えられている一説です。

熊野灘で水揚げされた鯖は、熊野(三重県)や新宮(和歌山県)から北に向かった行商人たちの手によって、奈良・吉野地方の村々で売られました。そのルートはいくつか説がありますが、有力なものの一つに「東熊野街道」があります。
熊野を出発し、「ゐざさ」が創業した奈良・上北山村、川上村を抜け、吉野町方面へと進む道です。

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今のような冷凍技術が無い時代。水揚げされた「さば」はすぐに塩を施され、腐らないようにしました。その鯖を行商人たちが売り歩く間に、塩がなじんでいきます。

そうして、吉野地方の村々に運ばれた「塩さば」を薄くスライスし、握りこぶし大のすし飯の上に載せて、手近にあった柿の葉で包み、重石で押しを効かせて数日熟成させて作ったのが、「柿の葉寿司」の始まりと考えられています。

柿の葉で包めばお米も乾燥せずに携帯もできる。山村で生きる人々の知恵が詰まった「保存食」として誕生しました。

実際に、この鯖街道の影響でしょうか。紀伊半島の山間部には、鯖寿司を古くから食べていた地域があります。柿の葉寿司もその一つと考えてもよいでしょう。

この「鯖街道」については、お寿司のルーツを解説した記事でも詳しく書いていますので、そちらもぜひお読みください。

なぜ柿の葉でお寿司を包んだ?

そもそも、「葉っぱ」で包まれたお寿司は全国各地に存在しています。例えば、朴の葉や笹を使ったお寿司は各地にあります。
葉っぱは、携帯するにもよく、ご飯の乾燥も防ぎます。何より、いつでも手に入るので、全国で葉っぱに包んだお寿司が作られていたのだと考えられています。

実は、柿の葉寿司も奈良以外に和歌山や鳥取、石川などでも食されており、それぞれで少し違いがみられます。

石川県は笹の葉で巻いた「笹寿司」が有名ですが、加賀地方で「柿の葉寿司」も食されています。広げた柿の葉の上に、鯖・鮭などのネタ、寿司飯の順に載せ、表面に桜海老、青藻などを散らし、桶に重ねて重しを乗せて1日~数日おいてから食べたお寿司のようで、奈良のようにお寿司全体を柿の葉で包むことはしないお寿司のようです。

その他、鳥取県の智頭地方でも鱒をネタにアクセントに山椒を散らした柿の葉寿司が古くから食されています。

郷土に根付くお寿司はその土地の風土に深くかかわっています。奈良で考えると、柿の一大産地であったことが大きな理由でしょう。

柿の葉寿司

柿の木が身近にあったこと。それ加えて、「もう一つの鯖街道」のおかげで、紀伊半島には鯖寿司を食べる習慣が残っている地域が多い。食べていた鯖寿司を、近くにあった柿の葉で包んだ、というのが柿の葉寿司の誕生なのでしょう。

最初は偶然の産物として誕生したのかもしれませんが、後世になって、それはベストなパートナー関係だったことがわかります。
柿の葉には、ポリフェノールの一種「タンニン」という成分が豊富に含まれています。「タンニン」には防腐作用があり、保存食とするのにはとても適しています。

柿の葉寿司の「葉っぱ」についても以下の記事で詳しく説明しています。

柿の葉寿司はどれぐらい日持ちする?

当社にお客様から寄せられるご質問で多いのが「柿の葉寿司はどれぐらい日持ちするの?」という内容。

元々柿の葉寿司は、保存食として食べられ、また、山村に住む人々にとって海の幸は貴重だったため、夏祭りなどの「ハレの日」のごちそうでした。

しかし現代では、食品衛生などの理由から、押しを効かせて味をなじませたお寿司を出荷しています。そのため、当社では、消費期限は製造日を含んで3日間としています。オンラインショップでご購入いただくと、お届け日の翌日までお召し上がりいただけます。
※ただし、奈良県からお届けに2日以上かかる地域(北海道や沖縄、青森、秋田、離島)は消費期限の関係上、お送りすることができません。予めご了承ください。

柿の葉寿司の保存方法は?

では、届いたらどのように保存するのがよいでしょう?
基本的には、直射日光・高温多湿をさけていただくのが重要です。

シャリが美味しい温度は20度前後とされています。

とても寒い冬場は冷えすぎるとシャリが固くなってしまいます。暖房の熱風が直接当たらない、部屋の中で保存いただくのがおすすめ
逆にとても暑い夏場は、部屋の中に置いておくのが不安な場合も。その時は、冷蔵庫の野菜室に新聞紙などで包んだ状態で保存してください。直接冷気が当たらないようにするのがポイントです。

もし、シャリが固くなってしまった場合は電子レンジで軽く2分程度温めていただくと、シャリがほぐれて美味しく召し上がっていただけます。

また、余った場合の冷凍保存はおすすめしておりません。

当社でも冷凍商品を販売していますが、特殊な急速冷凍機を用いて製造した商品です。ご家庭の冷凍庫で冷凍すると、食味が損なわれる可能性があるのでおやめください。

なお、柿の葉寿司の日持ちについては以下の記事で詳細を記しています。

柿の葉寿司の食べ方

醤油を付けずにそのまま!

ゐざさの商品には確かに、醤油を付けているものが多いですが、柿の葉寿司は「醤油を付けずにそのまま」お召し上がりいただくのが本来の食べ方。

元々、日持ちするようにさばには塩が振られていました。今も塩と酢でさばは味付けをしています。
また、関西の寿司は「すしの飯に六分の旨さがある」と言われるほど、シャリにこだわりをもっています。元々少し甘めのシャリが関西のお寿司の特徴で、塩が効いたネタと寿司シャリの相性は抜群です。

柿の葉寿司をお召し上がりの際は、葉っぱをバナナの皮をむくようにはがし(葉っぱは食べないで!)、醤油を付けずにそのままお召し上がりください!

温めたり、焼くと美味しい「柿の葉寿司」

当社が美味しいと考えるシャリの適温は20度前後。しかし、外気温が低いなどして冷えすぎると、固くなってしまいます。

シャリが固くなった時には、電子レンジでほんのり温めていただくのがおすすめ。

【電子レンジでの温め方】
①柿の葉寿司2~3個を皿に載せてラップをかける
②500Wの電子レンジで30秒ほど温める

ご家庭でお使いの電子レンジによっても時間は多少変わりますので、それでもまだ固さを感じるようであれば、様子を見ながら、10秒ずつ追加するなどして温めていただければと思います。

そのほかに、「オーブントースターなどで焼く」という食べ方もおすすめ!

実は柿の葉寿司が生まれた奈良・吉野地方では、昔から冬場などシャリが固くなった柿の葉寿司を、柿の葉で包まれたまま軽く焼いて食べていたそう。

最近、テレビ番組などでもこの食べ方が紹介され、少しずつお試しいただくことも増えてきました。

ご家庭では、柿の葉で包んだままオーブントースターで230度で5分程度焼くのがおすすめです。柿の葉の表面に少し焦げ目がついたころが食べごろ。
熱いですので、注意して出していただき、柿の葉をはがしてお召し上がりください。

ネタに少し熱が入り、シャリもほくほくし、いつもの柿の葉寿司とは違った味わいをお楽しみいただけます。

なお、より詳しいことは以下の記事でもご紹介しています。

葉っぱを食べるとどうなる?

醤油を付けずにそのままお召し上がりいただくのが、柿の葉寿司の本来の食べ方であるとご紹介しましたが、柿の葉寿司を初めて食べる方が迷うのが「柿の葉の葉っぱ」は食べるのかどうかということ。

結論からいうと、柿の葉寿司の葉っぱは食べません。葉っぱを剥いて、中のお寿司のみをお召し上がりください。

葉っぱごと食べてしまっても健康に影響はありませんが、柿の葉寿司本来の食味が損なわれますので、ご注意ください。

なお、より詳しい食べ方を知りたい場合は以下の記事もぜひご参考にしてください。

柿の葉寿司の作り方

柿の葉寿司は食べたことがあっても作ったことはないという方は多いのではないでしょうか?
ここでは、柿の葉寿司の作り方をご紹介します。

シャリとネタの準備

しめ鯖の薄皮をむく

包丁でしめ鯖を切る

押し型にシャリを詰める

成形したシャリを完成させる

①スーパーなどで購入してきた「しめ鯖」の薄皮を指で少しずつ剥がす。
②鯖の皮目を上にして、包丁を斜めに入れて、手前に引いて切って鯖のスライスをつくる。
③市販のすし酢などを使ってシャリをつくり、100円均一ショップなどで購入可能な押し型に、酢飯150~175gを詰める。
④酢飯をギュッと入れ、上から蓋をして強く押し、蓋を取り裏返しにして押し出し、成型されたシャリを取り出す。

柿の葉でお寿司を包む

柿の葉にネタを乗せる

柿の葉にシャリを乗せる様子

シャリを乗せた柿の葉を巻く様子

柿の葉寿司の製造過程

⑤柿の葉の裏側(色が濃い方)を上にして手に持ち、スライスした鯖の裏側が上になるように、柿の葉の真ん中あたりに置く。
⑥鯖の上に、成形した寿司シャリを置く。
⑦柿の葉の先がとがった方を折り返す。同じように反対側も折り返して巻く。
⑧巻いたものをくるっと回転させ、両端を両手の指で丁寧に「左右」「上下」と折り込む(キャラメルの包み紙をイメージ)。

最後に、柿の葉を巻いたお寿司を箱の中に入れ、一面に敷き詰められたら、蓋をし上から重石を置いて押しを効かせます。
少し時間をおき、味がなじむと、美味しく柿の葉寿司をお召し上がりいただけます!

ちなみに、熟練者ともなると、10秒間に1個以上のペースで作っていくことができます。

作り方については以下の記事で詳しく解説しています。

奈良に来たら 柿の葉寿司のお土産やお食事を

最後に、観光などで奈良に訪れた際におすすめのゐざさのお店をご紹介。奈良に来たらぜひお立ち寄りくださいね!

ゐざさ 近鉄奈良駅売店

奈良観光の玄関口「近鉄奈良駅」の構内に2店舗。東口改札正面の「東売店」に、タイムズプレイス内の「西売店」。

近鉄奈良駅から奈良公園や興福寺、東大寺や春日大社は徒歩圏内。
奈良観光の帰りなどにお立ち寄りいただきやすいお店です。

ゐざさ 三条店

近鉄奈良駅からもJR奈良駅からも立ち寄りやすい、三条通りとやすらぎの道の交差点に構える店舗です。

小さいながらも、奈良名産「柿の葉寿司」をバリエーション豊かに取り揃えております。

一服できるイートインスペースも。
ぜひ、奈良観光の途中にお立ち寄りください。

ゐざさ 東大寺門前夢風ひろば店

奈良公園近く、東大寺参道横の複合施設「夢風ひろば」内にある店舗です。

2階はお食事処「ゐざさ茶屋」。柿の葉寿司を中心とした奈良の名産寿司と天ぷらなどが楽しめるお店です。奈良公園などの散策後のランチなどにご利用いただきやすいお店です。

1階は売店。お土産に柿の葉寿司をお買い求めいただくこともできますし、地方発送も承っております。

まとめ

この記事では、柿の葉寿司の由来・発祥や、日持ち、食べ方、作り方などについて解説をしました。
柿の葉寿司の歴史をたどると、山村の人たちの知恵が詰まった郷土料理であることがわかっていただけたかと思います。
また、焼いて食べる方法など、知られていない食べ方もご紹介させていただきました。
ぜひ、一度お試しいただければと思います。

この記事で、柿の葉寿司を食べたことが無い方は一度食べてみたい!と思ってもらえたら嬉しいです。

▼公式サイトはこちら▼

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