鯖棒鮨の歴史~奈良との関わり~

さば棒鮨 ゐざさのお寿司たち

こんにちは。奈良の郷土料理「柿の葉寿司」のゐざさ-中谷本舗-です。

当社は柿の葉寿司のメーカーですが、「名産寿司」と呼ばれる様々なお寿司を製造・販売しています。その中の一つに「鯖棒鮨」があります。柿の葉寿司に並び、お取り寄せとしてご注文いただくことの多い人気の商品です。鯖をネタに用いるという点は、柿の葉寿司と共通していますが、それ以外にも当社が鯖棒鮨を扱うのには理由があります。

今回は鯖棒鮨の歴史を紐解きつつ、奈良と鯖との関わりを改めて概観したいと思います。

関西に残る「棒鮨」の文化

棒鮨は押鮨の一つです。「押し型」と呼ばれる枠にネタと寿司シャリを入れ、上から押して作るお寿司の種類です。鯖寿司はほとんどがこの「棒鮨」の形です。

元々寿司は「なれ寿司」といい、「魚の漬物」のようなものでした。それが江戸時代になり、酢が登場して、今のような寿司の形になったと言われています。

お寿司の誕生にまつわる歴史は非常に興味深いです。そちらについては、以下の特集記事をぜひお読みいただければと思います。

酢が登場し、江戸では新鮮な魚を使った「握り寿司」が一世を風靡しました、一方、関西では棒鮨の文化が色濃く残り、今に伝わっています。

京都の鯖棒鮨

鯖棒鮨と言えば、京都が有名ですね。京都で鯖棒鮨が食べられるようになったのは、やはり「鯖街道」の影響が大きいでしょう。

鯖街道は、福井県の小浜から京都まで続く約80キロを指します。若狭湾で水揚げされた鯖は江戸時代、この道を通って2~3日かけて京都まで運ばれたそうです。京都に着く頃には、ちょうど良い塩加減になったようで、その鯖を使って棒鮨にしたのが、「鯖棒鮨」です。

今でも京都には、鯖のお寿司を食べさせるお店がいくつもあります。

大阪のバッテラ

厳密にいえば、「棒鮨」ではありませんが、大阪では鯖を使った「バッテラ」と呼ばれるお寿司がよく食べられています。

バッテラとは、木枠に鯖を敷きその上から寿司シャリを入れて押した後、鯖の上に酢で味付けした白板昆布を載せる「押鮨」です。

明治時代、大坂・南船場にあった「寿司常」という寿司店が考案したと言われています。元々はコノシロという魚を使っていましたが、次第に鯖を使うように。バッテラという名は、その寿司の姿が小舟に似ていたことから、ポルトガル語で小舟を意味する「バッテーラ」が由来となっています。

関西地方では、スーパーなどでも売られているとてもなじみ深い、大衆的なお寿司の一つです。

奈良と鯖との関係

福井(若狭)と京都を結ぶ「鯖街道」が有名ですが、実は紀伊半島にも「鯖街道」があったのをご存じでしょうか?紀伊半島沖の熊野灘で獲られた鯖を行商人が北に向かって売り歩いたのです。

そのルートは諸説ありますが、一つに東熊野街道があります。紀伊半島南端の熊野地方から、奈良県の下北山村、上北山村を通り、吉野町へと運ばれます。その終点は奈良・桜井あたりだったのではないかと言われています。

もう一つの「鯖街道」が、奈良県にも鯖寿司の文化をもたらしました。その一つが柿の葉寿司ですが、それ以外にも「鯖寿司」が名物だったと文献に残されている街があります。

今井の鯖寿司

奈良県橿原市今井町。初代天皇・神武天皇が祭られている「橿原神宮」の近くにその街はあります。今でも古い町並みを残し、閑静なエリアですが、元々この街は、大坂・堺と並ぶ商工都市として栄えました。

▼今井町について詳しくはこちら▼

この街の名物が「鯖寿司」だったのです。1712年に出版された日本の百科事典『和漢三才図絵』によると、元禄(1688~1704年)の頃の名物として「今井の鯖ずし」の記述が残されています。

当時の鯖寿司はどんなものだったのでしょう?
1802年の書物「鮓飯秘伝抄」によると、「塩鯖は塩出しし、骨や薄皮をとり、酢飯を抱かせ、飯と鯖を交互につめて押し、飯の酸味が鯖にうつったら取り出して、切り分けて飯とともに食べる。朝に漬けて、夕方には食べる」と書かれています。

「押す」という言葉があるように、今の「鯖棒鮨」に近い形だったということは推測されますが、それ以上のことは文献が少なくわかりません。おそらく、有名店が今井町にあったということではなく、家々で家庭の味として作られていたのではないだろうか、と思います。

この奈良の地で、昔から鯖を使ったお寿司が名物として食べられていたのは確かで、鯖棒鮨もその一つだったと考えられるのです。

最後に―ゐざさの「さば棒鮨」

ここまで鯖棒鮨の歴史を中心にみてきました。「ゐざさ」でも、関西の伝統的な寿司文化をこれからも継承していくため、「さば棒鮨」を販売しています。
昔ながらのレシピを今に受け継いでる当社の人気商品です。

■さば棒鮨(税込1080円)
冬場に日本近海で獲れた脂の乗りが良い「寒さば」を使ったゐざさのさば棒鮨です。
少し甘めの寿司シャリと濃厚な旨みが特徴のさばの相性は抜群。約40年前から販売し続けているゐざさのロングセラーです。

シンプルな「さば棒鮨」のほかに、昆布で巻き上げた商品も販売しています。

■昆布巻きさば棒鮨(税込1620円)
冬場に日本近海で獲れた脂の乗りが良い「寒さば」で大きなサイズの鯖を使用。黒板昆布で巻き上げた一品です。頬張ると昆布と鯖の旨みが一気に味わえる、ゐざさ自慢の棒鮨です。

ぜひ、鯖と奈良との関係、鯖棒鮨の歴史を感じながらお召し上がりいただければと思います。

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